就職活動の人気就職先の一つであるメガバンク。その中でも金融業界のみならず日本のリーディングカンパニーとして君臨する三菱UFJ銀行の元行員の方に取材を実施した。
邦銀の生態について徹底解明していただいた。メガバンク就職希望者、そしてメガバンクから次のキャリアを探している人にぜひご覧いただきたい。3回にわたってお届けする。
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- キャリハイ@編集部
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目次
米国の就職活動は激戦
–自己紹介お願いします。
海外(非英語圏)で生まれ、海外で教育を受けました。親が総合商社に勤めていたこともあり、ロンドンの学校に通った後、大学はアメリカで過ごしました。結局大学まで海外で育ちました。
米国大学を卒業後、日本の大手邦銀である三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入行しました。数年勤務したのち、投資銀行に転職し現在はクロスボーダーを中心にM&Aの案件をこなしています。
–就職にあたって、なぜ日本に帰ってきたのでしょうか?
理由は2つあります。1点目は、「日本人としてのアイデンティティ」です。アメリカで育っていても、ルーツは日本なので、「日本」への興味関心は幼いときから強くもっていました。
従って、このまま自分がアメリカに染まりすぎてしまうことを懸念していました。
日本の大学に留学を検討したこともあるくらいでしたが、結局はやらずじまいだったので、日本で社会人経験を積みたいと考えるようになりました。
2点目は就職のしやすさです。
アメリカでは、いきなり超大企業に就職したり、大学で学んでいたことと無関係の業界に就職したりすることが非常に難しいです。
日本では、新卒一括採用という独特のシステムのおかげで、いきなり超大手にも入れますし、美術系学部から金融機関に入る事もできます。
しかし、アメリカで大手広告代理店に就職したいとします。アメリカの電通に入ると考えてください。
アメリカでは基本的に特定のポジションの空きが出たときに募集が出るので、有名企業の空きポジションは新卒、既卒関係なく一斉に争われます。
当然、大学でその仕事に関連する学部を出ていない人にチャンスはありませんし、例え関連学部を卒業していても既卒との争いに勝つのは至難の業です。
従って、たいていは街の小さな広告代理店にインターン生として入り、大学卒業後、同じところか同規模の会社で経験を積み、2~3社ほど渡り歩いた後に大手に転職するという流れがあります。
友人の一人は、上記のようなキャリアを文字通りあゆみ、町中にある小さい広告代理店からキャリアをはじめ、現在はシンシナティのP&G本社のマーケティング部門でブランドマネージャーをしています。
日本ではそのようなキャリアはなかなかないのではないでしょうか。
もちろん一部の企業や業界において、アイビーリーグ等のトップ校出身生は新卒で超大手企業に入社していますが、アメリカは転職してスキルを身に着けた後に大手に入るのがむしろ一般的といえます。
大学で何を学んでいたか、どういう成績をとっていたかも重要視されます。私の友人のケースでは、大学でオールAの成績を収め、教授推薦でゴールドマンサックス(米国本社)から内定を得ている友人もいました。
当時の私は、米国で就活するにあたって、社会人経験のある人やアイビーリーグの学生に対して優位といえるものがなかったこととあわせて、ゴールドマンサックス等の超一流企業に入るのは難しい状況でした。
一方、日本は一定程度以上の学力や語学力に加え、スポーツ等の一芸があれば、業界問わず最初から様々な優良大企業に入れます。
どうみても日本で就職したほうが楽に優良大企業に入れると思いました。
米国で転職する際もネームバリューのある企業でいい経験をしていた方が転職をしやすいので、将来の米国転職を視野にいれても日本の大企業にいたほうが自分には有利だと考えていました。
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海外支店の影響力を感じ三菱銀行へ
–その中で、メガバンクに入行したのはなぜでしょうか?
ひとつは、資源やインフラ開発に関わるプロジェクトファイナンスと呼ばれる分野に従事したかったというのが理由ですが、それ以外は具体的にやりたいことは当時ありませんでした。
メガバンクは幅広い業務がありますし、金融という切り口で様々なことを学べるなくらいに思っていました。
総合商社であれば、例えばエビ担当になったら原則的にはずっとエビ担当になるし、そうした会社に比べると、幅広く学べる銀行がよいなと考えました。
–就職活動はどのようにしたのでしょうか?
就職活動の主戦場はボストンキャリアフォーラムで、私はそこで内定を大量に得ました。米国の競争にさらされて、厳しい環境だったのでボストンキャリアフォーラムのときは自分がモてる感覚に襲われましたね(笑)
どこの会社からも来てくれ来てくれと言われて落ちる会社はほとんどありませんでした。
–メガバンクは三菱UFJ銀行以外にも三井住友銀行やみずほ銀行がありますが、なぜ三菱に?
当時、学生の私からみて邦銀の中でも海外のプレゼンスが強かったのが三菱東京UFJ銀行でした。海外支店で活躍できる可能性があり、海外支店自体の影響力がありそうなのが唯一三菱東京UFJ銀行だと考えていました。
地方の配属で目の前が出世コースから外れた
–三菱東京銀行ではどのようなキャリアを?
最初は地方支店配属になりました。同期が東京都内の支店に配属される中、いきなり地方支店の配属になり、辞令を聞いた瞬間は目の前が真っ白になりましたよ。
配属を告げられた瞬間、すぐにアメリカに帰ろうとすら思いました。東京に住もうと思って日本に帰ってきたにも拘わらず縁もゆかりもない土地に配属されたわけで。
そもそも自分の市場価値を高めることにおいて、日本に帰ってくること自体はプラスになるとは思っていなかったです。
大企業に入れて、日本を学べるという点は良かったですが、世界規模の労働マーケットで見たときに日本にずっといると相対的に差を付けられると考えていました。ただでさえ日本は不利なのに日本の地方都市ですよ。
地方都市で4年間働きましたが、日本最初の4年間ははっきり言って無駄な時間だったと思います。最初の1か店目ではほとんどの人がそうするように融資業務に従事していました。
出世に体育会が影響するかどうかは支店によりけり
–やはり銀行だと体育会組織ですか?
部店によりますね。というか人によりけりです。私の配属先はたまたま温和で常識的な人がほとんどでしたから、各種ハラスメントを目の当たりにしたことはほぼありませんでした。
同期の配属店では「今日も戦場に言ってくるわ」と言うくらいピリピリした雰囲気があったようです。
しかし、一般論として、一昔前に比べればコンプライアンスや世論が厳しくなっていたこともあり、ハラスメントはかなり少なくなっていると言えると思います。
私の配属された都市は地方とはいえ大都市だったということもあり、田舎の支店よりは全般的に好ましい環境だったという側面もあるようです。
–田舎の支店と主要都市の支店では仕事の内容が異なるのでしょうか?
一概には言えませんが、田舎の支店だと中小企業、地方主要都市だと大企業と接点があるという感じです。
かならずしも主要都市にいるからいいというわけではなく地方都市のほうが中小企業の社長と若手でも直接接点をもてるからいい経験になるとも言えます。
名古屋支店にいてもトヨタの豊田社長と若手が直接やりとりできるわけではないですから。
銀行は研修が充実している一方汎用性のあるスキルが身につきにくい
–銀行の育成システムはどのようになっているのでしょうか?
研修自体は量的にはものすごい充実していますし、まわりに1人ぐらいは目指したい先輩や上司もいるでしょうから、控えでありつつ主体性のあるようなタイプの人間であれば、割と成長機会には恵まれていると言えます。
一方で、そうでないタイプの人間にとって、銀行の育成システムはうまくできていない印象です。上司が下の人間を育てるための仕組みがないように感じます。その根本の原因は転勤があることです。
転勤があるからどうせその支店からいなくなると考えると部下を長期目線で育てようという人はよっぽどよくできた人以外はいないですね。
自分が在任中にやることは部下の育成ではなく、自分が部下を使っていかに成果をあげて部長にとりいって次の支店やいいポジションに推薦してもらうことしか考えませんよね。
従って、若いうちにどんな先輩や上司の下につくかで、マインドであったり、仕事の進め方であったり、その後の銀行員生活が大きく変わってくると言えます。
さらに、銀行員としての業務は、その特異性から、他社でも通じるような汎用性が乏しいという特徴があげられます
–汎用性のあるスキルは身につかないということですか?
銀行の特徴は独自のデータベース、独自のソフトウェアを使って顧客管理をしたり、業務遂行をしたりしています。
エクセルとかパワポを使う環境であれば、少なくとも他社でもすぐに通用する汎用スキルが身に付いたでしょうが、銀行独自のスキルしか身に付きません。
銀行では、そうした独自のソフトを使って分析業務等をするわけです。なぜこの会社の格付けがよいのか、今回業績悪かったけど背景資産あるから財務基盤しっかりしていますねとか、分析を基にしたレポートを作ります。
融資している先が今後どうなるか等のレポートや稟議書を上司にあげていました。
私はエクセレントカンパニーと呼ばれる優良大企業の担当だったんですが、それらの会社は財務基盤がよくて逆に面白みがないんです。
トヨタなんかは三菱東京UFJ銀行より格付けのいい会社なので融資元より格付けのいい会社の稟議書作成なんてのは茶番に近い話です。どうせ融資は継続して行われるわけで。
その後、私は地方の支店から東京の本店で勤務することになりました。
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銀行の面白さは人それぞれ
–銀行の仕事で面白い点は何なのでしょうか?
一般論ですが、付加価値がある仕事をやったときが面白い瞬間だと思います。
取引先のニーズを掘り起こし、そのニーズを充たすファイナンススキームの構築、実行まで漕ぎ着け、取引先から感謝されると同時に、部店の目標も達成する。
こうした瞬間は銀行員としては大きなやりがいや達成感を感じられる時だと思います。
個人的には、これまで銀行がやってこなかったスキームで社債の発行をするとか新しい取り組みをしたときは特に面白いと感じながら業務に取り組めました。
また、私は本店で働いていたので銀行全体を見ることができたのが大きかったですね。
小さい支店だと、ネジ工場の社長と交渉をしたり、経営者と直接やりとりがあって勉強にはなる一方、一支店では全体が見ることができません。
若いうちに少し経験するのはいいんですが、一支店っていうのは本部機能がある本店に比べると業務の拡がりが限定的ですし、優秀な人も少ないです。
本店にいる方が、銀行の全体が分かり銀行内の力学を学べたという点で面白かったですね。
とは言え、面白さに関しては銀行員によってそれぞれ異なってくるので、興味のある方は色々な方に聞いてみるとよいでしょう。
三菱の歴史と支店の重要性のつながりは面白い
–例えば影響力があると言われる京都支店はどうなんでしょうか?
いい質問ですね。京都支店に本部機能はないんですね。調査部であったり、証券営業部であったり、人事部であったり、本部にあるものがないわけです。
本店にいれば、頭取を含む会社のトップマネジメントとの関わりが持てたりして、自分の会社のトップがどういう人で、全社の方針がどういう風に変遷していて、誰がどういうルートに乗っているか等、色々と勉強になります。
一方、京都支店は出世コースではありますが、職場のトップは支店長なわけで、本店にいるときほど会社全体を感じることは出来ないでしょうね。
それでも京都支店の支店長になると常務級まで出世することが多いので、京都支店長は本当に偉いですよ。
銀行には出世店というのがあって、例えば九州だと久留米支店が良い支店だとされています。長崎支店もそうです。こういうのは三菱の歴史関係をひもといていくとなぜそういう力関係になるかわかります。
三菱重工の拠点があるのが長崎でして、そこの担当の銀行を三菱銀行がやっていて、三菱重工は影響力のある企業ですので三菱銀行でも位の高い人が担当していたわけです。
そういう担当をしていた人が役員になっていき、長崎は役員を輩出する出身店となっていきます。
他にも名門と言われている支店があり、なぜそこが名門支店かを調べるのは興味深いです。
三菱のような財閥の系譜を知ることで、日本の近代歴史を学ぶことにも繋がり、それも三菱東京UFJ銀行の職員として働く面白みの一つとも言えます。
×をつけられないようにすることが出世において大事
–銀行の企画は何をするのですか?
適切な人材配置や会社のリソース配置ですね。後は、リテール、法人営業、証券、カード等の経営企画のようなことをします。
銀行全体の行く末を考えている存在ですね。銀行は、銀行だけではなく、カード会社、リース会社、証券会社と様々な会社をかかえています。
後、企画といえば本部には別の意味合いもあります。銀行というのはご存知の通り減点主義です。支店で営業をしていると必ずノルマが与えられます。そしてそのノルマを達成できないと×(バツ)がつきます。
本部の企画にいると(数値目標的な)ノルマがないから×がつかないわけでして。
本部で×がつく人というのは、不正をしないとつかないので本部にいて×がついたと言っている人はよっぽどやばいことをした人です。ノルマがないので本部にいたほうが出世のためにはいいのです。
一方で、銀行の本流ともいうべき存在は利益を上げるために存在する営業本部です。営業本部にいると営業をするためノルマが存在します。
しかしながら、営業の中の中心機能である営業本部に出世コースの人たちがくるときは守られたタイミングで送られてきます。
つまり、優良顧客がついているとき、確実に営業成績があがることがわかりそうなときに送られてきます。こうして出世コースの人には×がつかないようにします。
もちろん景気が悪い時に営業本部に来ることもあるためその場合は最悪ですね。×がついて出世できなくなるリスクはあります。
営業本部には、現場をはいあがってきたわけではなく試験で優秀なプリンスみたいな人もたくさんいましたね。
銀行には、現場ゴリゴリと公家の2タイプがいるといえます。
–出世にも色々パターンがあるのですね。次回以降は学歴の話について伺いたいと思います。
編集後記:
連載の第1回であった。主に三菱UFJ銀行(三菱東京UFJ銀行)の話から銀行内における若手の仕事を取り上げさせていただいた。銀行は研修は充実している一方、汎用性のスキルが身につかないことが課題となっている。
次回以降では銀行における出世と学歴の話。そして銀行員の転職事情について赤裸々に語っていただいた。第1弾は銀行員の方には真新しいものがなかったかもしれないが次回以降もぜひご覧いただきたい。
次回以降では転職についてでるが銀行員からの転職はコンサルが多くなっている。
コンサルに興味がある方は、転職エージェントとしてアクシスコンサルティングをおすすめしている。銀行からコンサルのキャリアを多数サポートしている。
また、銀行員の方はかなりの方が登録しているがビズリーチは言わずもがなでおすすめなのでもし登録していない方がいたら登録してほしい。
逆に銀行に転職したいという方にも使っていただきたい。銀行への転職はおすすめしていないがフィンテックの新規事業立ち上げ等ではよいかもしれない。
今日は以上だ。